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的な仕事ではないかなというような弱気なことも考えることがございます。

 

○前田 
そこのところになると、皆さんもいつも胃が痛い思いをしていらっしゃるんじゃないかと思います。

 

○山下 
宣伝の基本プランというのは、やっぱりプロデューサーがまず出してやらなくては、宣伝担当というのはなかなかそこまで読み解いてくれる人がいるかどうかというのは大きな問題があるんですね。宣伝というのは別の人がやっているんですけれども、例えば私がことし手がけたミュージカルで「アンネの日記」がございました。この「アンネの日記」というのはもうだれも知っているので、ファミリーミュージカルとして売り出したら、もうそれだけで十分だろうとたかをくくっていたんですが、残念ながら、内容的にはファミリーミュージカルと言うにはちょっと辛過ぎるというのか、非常によくできたすばらしいミュージカルなので、来年は大々的にツアーも含めてやろうかと思っておりますが、「ピーターパン」のような、いわゆる小さい子供たちを連れていって喜ばせるようなミュージカルではなかったんですね。どっちかというと、大人のお母さんなり、お父さんなりが自分の娘に、見に行こうよと言って連れてきて見させる。そういうたぐいのミュージカルだったものですから、ファミリーミュージカルとしてホリプロさんと手を組んで売り出したんですけれども、これは全く失敗に終わりました。

 

○前田 
失敗とまだ決まったわけじゃないと思いますけれどもね。

 

○山下 
興行的に見てね。非常に動員に苦慮をいたしました。ところが、見た方は再度見たというアンケートがたくさん参りまして、何が間違っていたのかなと。
私は常々、男性ファンのついているアイドルの女の子を使うというのは不安なんですよ。というのは、若い高校生たちが劇場へ芝居なんか見に来ない。ところが、逆に女性のファンがついている男性アイドルは、多少ひねた難しいものでも来るんですね。その一例は、武田真治というホリプロのアイドルが出た蜷川幸雄演出の「身毒丸」というミュージカルですが、これは白石加代子さんも出た歌舞伎ネタの大変難しいものですけれども、興行的には最高でした。
なぜ、さっきの宝塚のトップかといいますと、宝塚は女性だけれども、ファンも女性なんですよね。男役の格好よさで人気を呼んだ人を女優として使っても、非常に演目が限られますけれども、宝塚のときのような可能性のあるものだと圧倒的に評価を受ける。だから、ダンスのうまい大浦みずきなり安寿ミラが出たミュージカルで、彼女らに踊らせないというのはプロデューサーの大ちょんぼなんですね。大浦みずきさんを退団後初めて使っ

 

 

 

 

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